大洗観光協会では、大洗の風土や文化の魅力を編集し伝える、地域おこし協力隊を募集します(応募期間 2025年4月1日から)。未来に継ぎたい「海の郷」をともにつくりませんか?
遠く水平線の向こうから朝日が昇ると、大海原が静かに光の粒を広げ、“神磯の鳥居”が幻想的に浮かぶ。遠い空を渡り鳥の群れが横切り、波打ち際の近くで水鳥たちが潜りを繰り返す。波に洗われ続ける数千万年前の巨岩たちは沈黙している。
かつて、大洗は都会の人々が海浜地で心身を癒すために訪れる保養地でした。やがて時代とともに観光は全国的に大衆化が進み、ここ大洗町でも港湾開発や交通アクセスの向上とともに観光客数を伸ばし、観光地の姿は大きな変化を遂げてきました。その一方で大洗町の人口は静かに減り続けています。
「観光客だけではなく、住民も魅力を感じる大洗の観光資源とは、何でしょうね」
そう問いかけるのは、大洗観光協会副会長であり、明治時代に創業した保養宿「金波楼」を前身とし、地方宿のあり方を模索し続けてきた「里海邸」の代表を務める石井盛志(52)さん。
1997年に兵庫から大洗に移住、メーカー研究職から転身し20代から宿経営に参画し、大洗町の観光の変遷を見つめながら、大洗の本質的な魅力について思索を続けてきました。
今回は、そんな石井さんの思いを汲みながら、大洗観光協会の仲間とともにこの地の魅力を見つめ伝えていく、地域おこし協力隊のメンバーを募集します。
「大洗の観光は明治時代にさかのぼり、宿泊施設に長期滞在しながら、温泉のように海水を活用して“療養・保養”のために冷浴・温浴を行い、清浄な海浜気候も観光資源として利用する保養文化から始まりました。戦前時期は夏の海水浴シーズン以外は閑散としていたため、戦後になると一年を通じての観光客増加を目指し港湾開発や観光施設や交通インフラの整備が重ねられてきました。
現在、海水浴客は全国どこでも長期低落傾向ですが、大洗は魅力的な日帰り観光スポットが増えてきたために観光客数が落ち込むことが無く、四季折々に観光客が訪れる茨城県を代表する海浜観光地として知られています。しかしながら夏の海水浴客の減少とともに、大洗が本来持っている“ゆったりと自分を休める場所”としての保養文化や、それを支える豊かな海自然環境も社会的に見えづらくなっているように感じています。」
「この町に来てワクワクしたことは親水空間があふれる水のまちであることです。日々を忙しなく過ごす都会の人や地域住民が集い、自然の導きで本来の人間力を取り戻せる場所として、豊かな水辺環境を分かち合えることは、とても幸せなことです。大洗らしい地域おこしとは、保養に資する親水空間の魅力を整理し、シビックプライドの観点からみた地域遺産として、鮮明にさせてゆくことだと思うのです。」
春の大洗サンビーチで潮干狩りをする人々(2025 石井盛志 撮影)
そうした願いとともに、大洗観光協会がもうひとつ現在取り組もうとしているのが、大洗のユニークな自然環境を地域資源として整理することです。大洗海岸の岩礁の形成時代である新⽣代古第三紀まで遡りながら、地学・地理学・考古学といった視点から、汽水域である自然環境・生態系・地域文化など、有史以来これまでに大洗に質的な活力を与えてきた地域資源(エリア・ケイパビリティ)を掬い上げて整理し、観光客や住民と分かち合えるようにしたいと思っています。
例えば、栃木県の那須の辺りで雨が降るたびに、那珂川(なかがわ)を下った大量の泥水はやがて大洗海岸に辿り着く。山のミネラルを含んだ川水混じりの土色の海水は、磯を覆って海藻に栄養を与える。山海の水の出会いは海藻の森を豊かにし、大洗海岸には海生生物が生息しやすいビオトープが形成される。このような大洗海岸で人々は古くから採藻漁や素潜り漁などをしてきた。など。
「訪問者にも地域住民にもあまり詳しく認識されていない、古くからこの場所にあり、これからもそこにあり続けるだろう(あり続けてほしい)大洗の風土やそれに基づく魅力を、私たちは編集していきたいと考えています。」
名勝として文化財指定されている大洗海岸(2020 石井盛志 撮影)
「海辺で夜風に吹かれて潮騒に安らぎを感じたり、荒波に心が洗われて自分本来の力を取り戻したり、保養地としての大洗の魅力の根底には単に美しいだけではない、豊かな生命が溢れる海辺や、平安時代から医薬の神様として信仰されてきた大洗磯前神社と、清浄性の象徴として岩礁に立つ“神磯の鳥居”などの存在があります。」
「自然環境と暮らしの歴史から育まれた風土や文化から、大洗の本質的な魅力を掘り起こし、そこに観光客や住民が分かち合える価値を見出し、海のまちを豊かに感じていただける大洗の新たな保養地ストーリーを紡いでいきたいのです。」
大洗の現在の人口は15,000人弱。日本の多くの地域と違わず、人口減少とともに、働き手や継ぎ手不足といった課題も顕在化してきています。将来、何百万人もの観光客を集める“量”の観光地を求め続けることは難しいかもしれません。それならば限られた人員で落ち着いて訪問者と関わることで付加価値が生まれる、スローな観光があってもよいのかもしれません。
観光を、観光客を呼び経済を活性化させるための手段としてだけではなく、地域住民の大洗への誇りの醸成や、その先の働き手や継ぎ手の増加。地域の人々にとって大切で守りたいものの再生など、地域の社会や環境、そして住民の暮らしをより豊かなものにするためのソーシャルマーケティング(地域社会の持続可能な発展に貢献すること)として捉えていければと考えています。
大洗観光協会のメンバーは大洗生まれ・大洗育ちのメンバーが多く、大洗の本質的な風土の魅力を当たり前のように享受してきたために、いくつかの重要な価値に気付きにくくなっているかもしれません。そこに外からの目線を交えて、大洗の価値を発見し、伝えていってくださる方に出会えることを、心から楽しみにしています。
魚も空気もおいしく、海風がふーっと吹く心地よい海の郷で、あなたを待っています。
大洗海岸の生態観察に参加する住民(2024 石井盛志 撮影)
▼主な仕事内容
・大洗町の本質的魅力を伝えるためのコンテンツ制作(記事・写真・動画・体験など)
・大洗町ならではの旅行商品の造成、集客のための広報PR
・大洗町の魅力の掘り起こし(地理、地質、風土、文化、生活など地域資源のリサーチと編集)
▼求める人物像
・大洗町への関心を深め、意欲的に挑戦できる方
・旅行・観光産業の活性化に情熱を持ち、主体的に行動できる方
・大洗町にとって本当に必要なコンテンツかどうかを考え、自ら判断し実行できる方
・地域の事業者や住民と積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係を築ける方
・クリエイティブで、柔軟な発想力を持つ方
・チームと協力しながら目標達成に向けて取り組める方
▼雇用形態
「委託型地域おこし協力隊員」として委嘱します。
▼募集人数予定
1名
▼勤務地
茨城県東茨城郡大洗町(町外での活動もあり)
▼勤務形態
・週5回(一日8時間)の勤務
・うち週3回以上は大洗町観光情報センター「うみまちテラス」に出勤
(現地での勤務日数については応相談可能。一部業務はリモートワークも可能。)
▼応募
詳細は大洗町役場HP内の“地域おこし協力隊”募集専用ページをご確認ください
(https://www.town.oarai.lg.jp/news/kyouryokutai-2025/)
「大洗海岸沿いで創業百年の旅館を営んでいますが、お客様のなかには月に数回泊まりに来てくれる方もいます。話を聞くと、『なんだかんだ、落ちつくし、気持ちがいいから来ちゃう』と伝えてくださいました。私自身も休みの日に真夜中に海に反射する月を見ながらぼーっとしたり、季節で匂いが変わることに気づいたり、忙しい日常のなかでも大洗の魅力を感じているような気がします。」
(大洗シーサイドホテル代表 / 石井 藤太郎さん)
「星がすごく綺麗だなといつも帰りに思うんです。大洗駅から駐車場に向かう道、都会では見ることができないであろう星がはっきり見えて、綺麗だなと思います。休みの日は海辺に行きゆっくりと本を読むのも好きです。」
大洗町観光情報交流センター「うみまちテラス」観光コンシェルジュ / 関根 香苗さん)
「夜明けの海は最高ですよ。変幻自在な風景、波音、潮風、空気の冷たさ、太陽の照り付ける感じ。海に行くと心の疲労が取れるんですよね。鹿島臨海鉄道で田園風景を超えて大洗に入るところの田んぼを6月頃走るともうすごい所だなと思います。」
(大洗観光協会副会長。里海邸代表 / 石井 盛志さん)
「大洗は暮らしやすい町です。みな温かく迎えてくれると思いますので、ぜひ新しい感性を大洗に持ち込んでいただきたいです。」
(大洗観光協会会長。割烹旅館肴屋本店代表 / 大里 明さん)
組織概要
【組織名】
一般社団法人 大洗観光協会
【代表者】
大里 明
【連絡先】
tel : 029-266-0788 (受付時間 9:00~17:00)
【住所】
〒311-1307 茨城県東茨城郡大洗町桜道301 うみまちテラス
【販売資格/免許】
旅行業登録-第3種-茨城県-茨城県知事登録地域限定旅行業第5号
(一社)全国旅行業協会正会員
【事業内容】
・地域限定旅行事業(茨城県知事登録地域限定旅行業第5号):各種企画旅行、手配旅行
・着地型旅行商品造成事業:オプショナルツアー/アクティビティの企画/開催
・イベント企画/運営事業:イベントの企画/運営
・販売企画事業:地域ブランドの創出、サービス/商品(お土産)開発
・人材育成:地域事業者/従業者向け各種セミナーの実施、語学力向上に向けた勉強会の実施
・システム構築事業:WEB販売システム全般の構築、システムのプラットフォーム化
・MICE・インバウンド受入事業:宿泊予約窓口、ランドオペレーター機能、エクスカーションの対応、周辺飲食店の多言語化
・地域マーケティング事業:観光振興に関わる新たなブランディング/マーケティング戦略の構築、各事業者へのコンサルティング
・情報発信:WEBページの製作・情報発信、SNSでの情報発信
・ふるさと納税事業:ふるさと納税推進/支援事業
記事投稿日:2025年04月05日